江戸絵画とは、江戸時代(1603〜1868年)に日本で描かれた絵画の総称です。「江戸絵」と呼ばれることもあります。およそ260年のあいだに、幕府に仕える絵師から町の版元まで、さまざまな担い手が現れ、日本の絵画がもっとも多彩になった時代とされています。この記事では、特徴、流派と絵師、時代の流れを順に説明します。

この記事の要点
  • 江戸絵画は、江戸時代に描かれた絵画の総称。一つの画風を指す言葉ではない。
  • 特徴は、流派の多さと、絵を楽しむ人が武家・公家から町人にまで広がったこと。
  • 代表的な流派は、狩野派、琳派、浮世絵、文人画(南画)、円山四条派。伊藤若冲ら個性の強い絵師も活躍した。

江戸絵画の3つの特徴

1. 流派が多い

室町時代から続く狩野派や土佐派に加えて、琳派、浮世絵、文人画、円山四条派、洋風画など、考え方も描き方も違う流派が同じ時代に並び立ちました。

2. 絵を楽しむ人が広がった

それまで絵を注文できたのは、将軍家、大名、公家、寺社が中心でした。江戸時代には、戦のない時代が続いて町人が経済力を持ち、絵を買い、飾り、楽しむ人が大きく増えました。木版で刷る浮世絵は、町の人が気軽に買える値段で売られていました。

3. 海外の描き方を取り入れた

長崎を通じて、中国の絵画や西洋の遠近法、陰影のつけ方が伝わりました。写生を重んじる円山応挙や、西洋画を研究した司馬江漢のように、新しい描き方を取り入れる絵師が現れました。

代表的な流派と絵師

流派特徴代表的な絵師
狩野派幕府や大名に仕えた御用絵師の集団。城や寺の襖絵・屏風絵を手がけた狩野探幽、狩野山雪
土佐派・住吉派やまと絵の伝統を受け継ぐ。細やかな線と彩色土佐光起、住吉如慶
琳派金銀を使った装飾的な画面。大胆な構図俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一
浮世絵町人の暮らしや流行を描く。木版画で広く流通した菱川師宣、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重
文人画(南画)中国の文人の絵にならい、詩と絵を一体で味わう池大雅、与謝蕪村
円山四条派写生にもとづく、わかりやすく親しみやすい絵円山応挙、呉春
洋風画西洋の遠近法や陰影を取り入れた司馬江漢、小田野直武

狩野派

室町時代に始まり、江戸時代を通じて幕府の御用絵師を務めた、日本の絵画史で最大の流派です。狩野探幽は、余白を大きくとった、すっきりとした画風を確立しました。お手本を写して学ぶ教え方が整えられており、多くの絵師が狩野派で基礎を身につけました。

琳派

師から弟子へ直接受け継がれた流派ではなく、先人の作品に憧れた絵師が、時代を隔ててその画風を学び直すことで続いた点に特徴があります。俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を尾形光琳が写し、その光琳の作品を酒井抱一が写したことは、よく知られています。

浮世絵

「浮世」とは、いまの世の中という意味です。役者、美人、名所、相撲など、その時代に人気のあった題材が描かれました。絵師が下絵を描き、彫師が版木を彫り、摺師が刷るという分業でつくられています。葛飾北斎の「冨嶽三十六景」、歌川広重の「東海道五十三次」は、19世紀後半にヨーロッパへ渡り、印象派の画家たちに影響を与えました。

個性の強い絵師たち

18世紀の京都では、流派の枠に収まらない絵師が活躍しました。細密な描写と鮮やかな色の伊藤若冲、大胆な筆づかいの曾我蕭白、奇抜な構図の長沢芦雪は、近年とくに人気が高まっています。

江戸絵画の流れ

時期おもな出来事
17世紀前半狩野探幽が幕府の御用絵師となる。俵屋宗達が京都で活動
17世紀後半〜18世紀初め(元禄期)菱川師宣が浮世絵の基礎をつくる。尾形光琳が活躍
18世紀半ば多色刷りの木版画「錦絵」が生まれる。京都で応挙、若冲、大雅、蕪村が活動
18世紀末〜19世紀前半歌麿の美人画、写楽の役者絵。北斎と広重の風景画
幕末歌川国芳らが活躍。開国により西洋の絵画が本格的に入る

現代への影響

江戸絵画の大胆な構図、平らに塗った色、輪郭線を生かした表現は、19世紀のヨーロッパで「ジャポニスム」と呼ばれる流行を生みました。現在のイラストレーションやグラフィックデザイン、漫画の表現にも、その流れを見ることができます。現代の作家にも、琳派や浮世絵の構図を手がかりに制作する人がいます。

江戸絵画を含む日本画の基礎は日本画の魅力|絵画としての美しさとその歴史で、海外の絵画との違いは海外アートと日本画の違いで紹介しています。

江戸絵画を見られる場所

東京国立博物館、京都国立博物館、出光美術館、根津美術館、MOA美術館、すみだ北斎美術館などで見ることができます。屏風や掛軸は光に弱いため、展示される期間が限られています。見たい作品があるときは、出かける前に各館の展示予定を確認してください。

この記事の結論

江戸絵画は、一つの画風ではなく、江戸時代に描かれた絵画の総称です。狩野派、琳派、浮世絵、文人画、円山四条派と流派をたどると、同じ時代にこれだけ違う絵が描かれていたことがわかります。まずは気になる絵師を一人決めて、実物を見に行くのがおすすめです。

よくある質問

江戸絵画(江戸絵)とは何ですか?

江戸時代(1603〜1868年)に日本で描かれた絵画の総称です。狩野派、琳派、浮世絵、文人画、円山四条派など、多くの流派が含まれます。

江戸絵画と浮世絵は同じものですか?

同じではありません。浮世絵は江戸絵画の一つのジャンルです。江戸絵画には、浮世絵のほかに狩野派や琳派などの絵も含まれます。

江戸絵画の代表的な絵師は誰ですか?

狩野探幽、俵屋宗達、尾形光琳、円山応挙、伊藤若冲、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重などが挙げられます。

江戸時代の美術の特徴は何ですか?

流派が多いこと、絵を楽しむ人が町人にまで広がったこと、中国や西洋の描き方を取り入れたことの3つが大きな特徴です。

世界アートの扉 編集部

海外の作家と直接やり取りし、原画・一点物を日本へお届けしているアートプラットフォームです。運営は株式会社IZUTSUYA。作品選びや飾り方のご相談は無料で承っています。